雪深い山間いでひたむきにさくらんぼを育てる高橋さん
山形県の北部・最上川にほど近い山間部に位置する大石田町(おおいしだまち)。大石田町は、東根・寒河江・天童といったさくらんぼ栽培が盛んな平地の産地よりも北に位置する山間の町で、東北地方の中でも有数の豪雪地帯として知られています。

冬には1メートル以上の積雪があるため、平地に比べて木を高く育てなければならず、剪定、受粉、摘果、葉摘み、収穫などのほとんどの作業に、高所作業用のはしごを立てて木の上部まで登る必要があり、栽培には多大な労力がかかる環境です。そのため、山形県内でもさくらんぼ農園の数が少ない地域となっており、特に県外では「大石田町のさくらんぼ」の名はまだ広く知られていません。

そんな大石田町で30年以上さくらんぼ農園を経営されている高橋さん。モンキフルーツのバイヤーがはじめて高橋さんのさくらんぼを食べたのは2024年のことでした。
「こんなに甘くて味が濃いさくらんぼははじめて食べた!」
バイヤーはすぐに高橋さんのさくらんぼを、全国に届ける手伝いをさせてほしいと商談させてもらいました。
研究熱心な夫がたどり着いた「究極の肥料調合」
高橋農園は高橋さんのご主人が消防員と兼業しながらはじめました。「夫は昔から何でも探求する性格だった。」と語る高橋さん。そんな研究熱心だったご主人が目をつけたのが「肥料」でした。
肥料の種類や配合・肥料を撒くタイミングを変えたりすると、さくらんぼの味や見た目にどのような変化が起きるかを何年も実験を繰り返すことで、ついには他の農園よりも甘くて張りのあるさくらんぼを育てる肥料調合にたどり着いたのです。

そんなご主人は数年前に他界。それからは奥さんである高橋さんが農園と”味”を守り続けてきました。当然ながら、美味しいさくらんぼを栽培するためには高価な肥料や手間が掛かります。安価な代替肥料もあれば、省いても果実は実るような工程もあります。さらに、もともと収穫量が不安定なさくらんぼ。その年の収穫量によっては赤字経営になることもあったそう。それでも高橋さんは
「夫が半生を費やしてたどり着いたさくらんぼの味を守りたい」
という一心で、ノートに細かく記してある実験の内容や結果をレシピとして、今も昔からの栽培方法を守り続けています。
高橋さんのさくらんぼの美味しさの秘密は、夫婦の信頼と深い愛から生まれたものだったのです🍒

高橋さん置かれている現状と課題
大石田町は山間地に位置しているため、果実の成熟が平地よりも1〜2週間ほど遅れ、必然的に出荷時期も後ろ倒しになります。農業協同組合(JA)では時期ごとに「1kg〇〇円」という一律価格で買い取りが行われるため、高橋農園が収穫を迎える頃にはさくらんぼシーズンはすでに中盤。市場価格が下がり始めており、本来の価値を下回る価格で出荷せざるを得ない状況なのです。
他の農園以上にコストと手間をかけて丹精込めて栽培されたさくらんぼが、「出荷時期が遅い」という理由だけで適正ではない価格で取引されている。わたしたちはこの点にとても不条理を感じました。

さらに、圧倒的な人手不足、近年の気候変動により収穫量が不安定になり、農園の経営が苦しい年が増えてきたそうです。
そこでモンキーフルーツでは
①収穫から発送までの手間をなるべくカットする工夫をこらす
②本来の適正価格で取引きする
という条件で高橋さんと契約させてもらいました。
山形のさくらんぼの収量が年々減っていくなか、こんなに美味しいさくらんぼを、少しでも長く、少しでも多くの人に届けたいという想いで、高橋さんの農園経営のお手伝いをしていければと思います。