150年続く理由
紅楓庵いとうファームが150年ものあいだ果樹づくりを続けてこられたのは、土地の恵みと、時代に合わせて変化してきた柔軟な姿勢にあると私たちは感じています。
天童の盆地特有の寒暖差と肥沃な土壌は、果実に甘みと香りを蓄える理想的な環境。農園が川沿いに位置することもあり、乾燥せず良質な水分を蓄えることができます。余計な手をかけずとも美味しいくだものが育つ地理的環境が、美味しい果物が育つ理由の一つだと伊藤さんは語ります。
さらに気候変動などの環境の変化に合わせて、栽培方法や果物の種類を見直し、新しい技術や工夫を取り入れています。その判断力と決断力は並々ならぬものがあります。10代目としての想いを胸に、果樹や果実と真剣に向き合い、見た目だけでなく、一つひとつの実の味わいを追い求めながら、日々丁寧に手間を重ねています。

見た目だけではなく、果物本来の味わいを
亜希子さんは、祖母から受け継いだ「この土地は栄養が豊富だから、肥料はやりすぎないほうが良い」という教えを大切にされています。その想いを受け継ぎ、化学肥料をできるだけ控え、自然に近いかたちで栽培を続けてきました。木や土の状態を丁寧に観察し、その年に必要な分だけを与える。そんな細やかな手入れが、果物本来の香りや味わいを引き出しています。
さらに亜希子さんは、見た目を揃えるための過度な栽培はせず、気候や土壌、日照といった自然の力を最大限に生かし、甘みだけでなく風味豊かな果物づくりを心がけています。
そのため、色づきにばらつきがあったり、小さな傷のある果実が生まれることもありますが、見た目と味は必ずしも比例しません。鮮やかな色合いでも甘みが足りない実もあれば、控えめな見た目でも驚くほど甘く、果汁にあふれる実もあります。
こうした自然に寄り添った栽培と丁寧な管理が、一つひとつの果実にまんべんなく養分を行き渡らせ、味のばらつきを生みにくくしています。 だからこそ、どの実を選んでも安心して“本当のおいしさ”を楽しんでいただけます。

目指す未来
亜希子さんが果樹農家として目指しているのは、2つの大きな挑戦です。
ひとつは、「規格外品」という言葉が持つマイナスの印象を変えること。
見た目がきれいに整っていても味が薄い果実があれば、反対に、色づきが控えめで小さな傷があっても驚くほど甘く、果汁にあふれる果実もあります。
大切なのは外見ではなく、その実がもつ“おいしさ”そのもの。ひとつひとつの個性を尊重し、本当の価値で評価される未来をつくりたいと伊藤さんは考えています。


もうひとつは、「女性ひとりでも続けられる農業」の実現です。
体力や時間の制約があっても持続できる仕組みを模索し、工夫を積み重ねることで、農業の世界に新しい可能性を広げています。
規格や見た目にとらわれない果物の価値づくりと、誰もが続けられる農業の形。その両方を追い求める伊藤さんの真摯な姿勢こそが、150年続く紅楓庵いとうファームの歴史を未来へつなぐ力になっています。
