みかんの名産地:佐賀・浜玉町の挑戦者
大学卒業後は有名企業でエンジニアとして活躍していた異色の経歴をもつミカン農家の重(しげ)さんは、48歳の時に脱サラして両親が営んでいた農園を受け継ぎました。 サラリーマン時代の経験から「まわりと同じようなことをしていてもビジネスとしての成長は限界がある」と考え、市場にはなかなか出回らない希少品種の栽培に挑戦しました。

地域の中でも異彩を放つみかん栽培を続けている重さん。現在は農場の面積が3倍に拡大したそう。 どうして重さんのみかん農園はここまで成長をしたのでしょうか。
幻の品種をよりたくさんの人へ
ベリーレアファームで栽培しているのは、いずれも希少性の高い品種ばかり。 なぜ希少性が高いかというば「栽培が難しい」から。重さんはハウス栽培を基本として、水や土の管理を徹底し、手間をかけることで希少な品種を安定して収穫できるようにしています。
●山下紅みかん

かつて浜玉町での栽培が盛んでしたが、日当たりの調整など栽培に手間がかかるため、新品種がトレンドになると徐々に生産量は減衰。今では”幻のみかん”と呼ばれるほど希少な品種となりました。 名前の通り鮮やかな紅色で薄い皮の中には、糖度12度を超える甘みと、ジューシーで強い果肉が特徴です。
●浜王

もともとは「口之津(くちのつ)39号」という口之津試験場で開発されていた品種で、栽培が難しいわりに終了が少ない為、世の中には広がらずひそかに途絶えていました。 しかし「味は絶品」ということで、数件の農家が自宅で露地栽培するなどほどぼそと残されていたものを、重さんがハウス栽培で数を一気に増やし製品化。2023年にベリーレアファームが「浜王」という名前で商標登録しました。 浜玉町エリアでも3軒の農家しか育てていない、まさにここでしか手に入らない幻の品種です。
温州みかんとは違ったプチプチを弾ける食感が特徴で、12度以上の糖度とさわやかな酸味のバランスが良いみかんです。
●潮美みかん

日本ではなかなか出回らないタネ無しのマーコットをハウス栽培しています。 栽培方法が確立されておらず、重さんも毎年工夫をこらしながら少しずつ収量を増やしている貴重な品種です。 20度近くの糖度が特徴でとても美味しく、これからに期待がもてる品種です。
●麗紅(れいこう) 別名:はまさき

清見オレンジをベースにアンコールとマーコットをかけ合わせたイイトコドリの品種です。 佐賀県唐津のみかん産地ではとても愛されており、バランスのとれた味に美しい見た目から、贈答品としてもお勧めしたいみかんです。
●南津海(なつみ)

初夏に食べられる希少なみかんで、見た目はゴツゴツしていますが温州みかんのように手で剥いて食べることができます。糖度も15度前後ととても甘いみかんです。 種がある品種ですが、ベリーレアファームではハウス栽培なので多種の勾配が制限されるため、比較的種は少なめになっています。
味を決める、水とミネラルの哲学
重さんのミカン栽培の肝は「水分量の管理」。
ハウス内の水を極限まで切る――。夏から秋にかけて水分をほとんど与えないことで果樹の生命力を呼び起こし、そのエネルギーを実に凝縮させることで濃厚な甘みを生み出します。 そのかわりに老木は枯れやすくなり、毎年全体の5〜10%を新たな若木へと植え替ないといけないそうで、多大な労力と資金がかかります。
もうひとつのこだわりは「ミネラル」。
福岡県にある水産加工場で廃棄となる海苔の粉を仕入れハウス内の畑に撒いており、海苔のミネラル分とアミノ酸が土に混じることで、味がしっかりと決まります。
「みかん栽培は機械化が難しい。だから人の”情熱”が必要なんです」と語る重さん。
こうした細やかな管理と長年の試行錯誤が、希少品種の安定的な収穫と、他とは一線を画す味の秘密なのです。
未来を託す、継承への想い
佐賀県唐津市はもともと風が通りやすいのに加え、近年の強力な台風の影響でビニールハウスが骨組みごと倒壊することもめずらしくないそうです。 その度に自ら修繕し、骨組みから張替えまで一人でこなす重さんももうすぐ還暦を迎えます。 浜玉町の農家も例外なく継承者問題に見舞われいるエリア。
それでも重さんは前を向き
「佐賀への移住や就農が活発になるように、佐賀産のみかんを全国に発信して、次の世代にこの畑をつなぎたい」
と語ってくれました。
希少品種のみかんの味と想いを未来へ――、浜玉町から新たな挑戦を応援してください!
